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フラロデンドリマー合成と医薬品への応用 |
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「機能材料」, 24, pp.14-22 (2004). より一部抜粋してここに掲載いたします。 |
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1. はじめに 1993年にWooleyらが初めてC60をコアに持つデンドリマーの合成を発表1)して以来、Fréchetらによる初期の合成研究から、Hirsch, Diederichらをはじめとする多くの研究者が参加する物性、機能の研究へと大きな広がりをみせ、最近では、一連の複合体をフラロデンドリマーと呼ぶようになった2)。フラロデンドリマー(fullerodendrimer)とは、フラーレン(fullerene)とデンドリマー(dendrimer)を組み合わせて造られた造語である。C60に代表されるフラーレンは電子受容体や抗酸化剤、あるいは一重項酸素増感剤としての高い機能を持つことが知られている。一方、規則正しい枝分かれ構造を持つ樹木状多分岐高分子であるデンドリマーは光捕集アンテナ機能や細胞認識能などの特異な機能を持つことが知られている。ナノテクノロジーのキー化合物と考えられているフラーレンとデンドリマーの複合体であるフラロデンドリマーはこれら両方の機能を兼ね備えたより高次の機能発現が期待されることから高い関心を集めている2,3)。フラロデンドリマーの合成法については、Hirsh-Bingel反応を利用した例をはじめとして多数の報告例がある。しかし、そのどれもが収率や反応操作の簡便さといった面から見て満足のいく合成法とは言えなかった。後で詳しく述べるが、フラーレンを様々な分野へ応用する上で『フラロデンドリマー』は強力なツールになる。しかし、その合成法が十分確立されていないのでは、フラロデンドリマーを利用した用途開発は到底おぼつかない。そこで筆者らは用途開発を加速するだけのインパクトを持った『フラロデンドリマーの簡便な合成法』の開発について検討した。 2. フラロデンドリマーの合成 2.1ジスルフィドの光付加を利用する方法4) まずはじめに、これまでに報告例の無いジスルフィドのラジカル付加を利用したフラロデンドリマーの合成を試みた。光反応を利用したフラロデンドリマーの合成はほとんど例が無く、合成法としてのメリットが大きい。また、フラーレンに硫黄原子が直接結合することによる新たな物性も期待できる。筆者らは安定なチイルラジカル(RS•)の生成が期待されるジフェニルジスルフィド骨格を中心に持つポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(1)を合成した。PAMAMデンドロンを用いた理由は以下の通りである。 i) 安価に大量合成が可能である。 ii) 末端官能基の自由な修飾が容易で発展性がある。 iii) 光化学的に安定なアミド結合で構成されている。 iv) 細胞毒性がほとんど無いことが確認済みである。 v) これまでフラロデンドリマーに用いられた例がない。 実際にデンドリマージスルフィド(1), C60及びジフェニルジセレニドのo-ジクロロベンゼン溶液に対し高圧水銀灯照射を行なったところ、目的のフラロデンドリマー(2)を16%の収率で得ることができた(図1)。 |

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フラーレン−硫黄結合を持つフラロデンドリマーの例はこれが初めてで、酸化還元電位をはじめとする物性・機能についてはこれまでにないものが期待されるが収率は満足のいくものでは無かった。 2.2アントラセンの[4+2]付加環化反応を利用する方法5) 次に、フラーレンの化学修飾において比較的研究例の多い付加環化反応を利用することを考えた。アントラセンとフラーレンとの間で[4+2]付加環化反応(Diels-Alder反応)が可逆的に進行することは良く知られている。そこで筆者らはアントラセン骨格を中心に持つポリアミドアミン(PAMAM)デンドロン(3)を合成した6)。C60とデンドロン(3)とを窒素雰囲気下o-ジクロロベンゼン中40°Cにて4日間反応させたところ、付加体であるフラロデンドリマー(4)を12%の収率で得た(図2)。C60とアントラセンのDiels-Alder反応は光照射によっても進行することが知られている。そこでデンドロン(3) 1当量とフラーレン2当量との混合溶液をパイレックス管中で高圧水銀灯照射 (l > 300
nm) を行ったところ、わずか1時間の照射時間でフラロデンドリマー(4)が21%の収率で得られた。興味深いことに、フラロデンドリマー(4)はメタノールに可溶であり、反応後、未反応のC60をろ過によって取り除くことができるため精製が非常に容易であった。 |

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2.3 Diels-Alder反応を利用した合成法の改良7,8) 上記の反応は、収率の面で十分な結果は得られなかったものの、極めて温和な条件下、触媒や塩基等の反応試薬を一切必要とせず、ただ原料を混合するだけでフラロデンドリマーが得られる点が非常に優れている。もしもこの反応の収率がこれまでに知られているフラロデンドリマーの合成収率の中で最も高いものになれば、当初の目的であるフラロデンドリマーの用途開発においてブレークスルーになるような『フラロデンドリマーの超簡便合成法』となるに違いない。そこで収率の向上を目指してデンドリマーの分子デザインの検討を行い、以下の2点について改良した。i) 付加体の橋頭位にデンドロン部位が置換しているのは立体的に不利なのでデンドロン部位の位置をアントラセンの9位から2位へと変更した。ii)より電子吸引性の高いカルボニル基を用いてアントラセンとデンドリマー部位とを結合した。 新たにデザインされたデンドロン(5)を用いC60との付加反応を行なったところ驚くべきことに70%という高収率でDiels-Alder反応が進行しフラロデンドリマー(6)が得られた(図3)。これはフラロデンドリマー合成の収率としてはこれまでの最高記録と肩を並べる結果である。この様にわずかな構造の違いが収率に大きく影響することは大変興味深い。 |

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3. 開発した合成法の利点 これまで知られているフラロデンドリマーの合成法で最も頻繁に用いられている反応は、Hirsh-Bingel反応であった。これは-ジエステルをカルベノイドとして用いる反応で、反応試薬として塩基やCBr4などが必要である。その他に報告されている例をみても、炭素−炭素結合によってデンドリマーとフラーレンをつなぎ、フラロデンドリマーを合成しようとする場合、これまでの方法では必ず塩基などの試薬を必要とした。一方、筆者らの開発したアントラセンとC60とのDiels-Alder反応を利用したフラロデンドリマー合成法は、原料をただ混ぜるだけでHirsh-Bingel反応と同等かそれ以上の収率を達成している。こうした『フラロデンドリマーの簡便な合成法』を用いれば、これまで困難であったフラロデンドリマーの大量合成が可能となり、工業化する上で大きなアドバンテージとなることは間違いない。 フラロデンドリマーはもはや安価に大量供給可能な材料となったのである!! これまでその高い機能が注目されているにもかかわらずフラロデンドリマーの研究が遅々として進まないのは合成の困難さによるところが大きかった。そうした意味でもフラロデンドリマーの用途開発研究において一つのブレークスルーになるに違いない。 4. フラロデンドリマーの物性・機能 4.1フラロデンドリマーの意味と可能性 フラーレンとデンドリマーの複合体を構築することにどのような意味と可能性があるのであろうか?これまでの研究を眺めてみると以下に示すような2つの目的を見て取れる。 @ナノ構造体のデザインと構築 フラーレンをナノ構造体の土台として用い、そこにデンドリマーを置換することにより、望みの大きさと形状を持った分子を構築する。球状(Ih対称)のC60を土台にデンドリマーを作れば、たとえ低い世代のデンドリマーを用いた場合でさえも完璧にまん丸なシステムを構築できる。更に、C60は特定の位置に最高で6つまでの置換基を導入することができるので、テーラーメードデザインの多官能基デンドリマーを作ることも可能である。C60の値段が安価になりつつある現在、ナノ構造を設計・構築するための手段として、こうしたフラーレンを土台として用いるというアイデアはますます重要になるだろう。 A機能の相乗効果を狙う 最近、フラーレンとデンドリマーの機能の相乗効果を狙った研究が多く見られるようになってきた。フラーレンは電子受容体や抗酸化剤、あるいは一重項酸素増感剤としての高い機能を持つことが知られている9)。一方、デンドリマーは光捕集アンテナ機能や細胞認識能などの特異な機能を持つことが知られている10)。フラーレンとデンドリマーの複合体であるフラロデンドリマーはこれら両方の機能を兼ね備えたより高次の機能発現が期待される。 このとき特に重要なのはフラーレンの物性を損なうこと無く多官能基化が可能なフラロデンドリマー特有の形状であることは言うまでもない。フラーレンに直接結合する部位が多いほどフラーレン特有の系は寸断され物性が損なわれる。通常の多官能基化ではこの点が問題となるが、フラロデンドリマーの場合ただ一か所の結合を使って多官能基化が可能となる。 4.2フラロデンドリマーの物性 C60は興味深い物性を数多く持っている。しかしこれまではその溶解性の低さが応用研究の妨げとなってきた。我々の合成したフラロデンドリマー(2),(4),(6)は有機溶媒への溶解性がC60に比べ劇的に向上した。通常良く用いられるベンゼン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチルなどの溶媒には驚くほど良く溶ける。前述の通り、メタノールのようなC60を全く溶解しない溶媒にも大変良く溶ける。こうした高い溶解性、即ち、様々な媒質との親和性の高さは、将来C60を含むハイブリッド材料を構築する上で非常に有用であると考えられる。更に、フラロデンドリマー(2),(4),(6)は水溶性であった。中村らの研究を端緒とする水溶性フラーレンの化学11)については現在特に興味が持たれている分野であるが、フラロデンドリマーにおいて水溶性のものはごく限られている。デンドリマー(4)は酸性水溶液中において3級アミンのプロトン化によるアンモニウム塩の形成により溶解する。フラロデンドリマーが水溶性となることは、ただ単純に溶解性が向上したという以上の重要な意味を持つ。特に、医薬品への応用を念頭においた場合、水溶性であることは、生理・薬理活性の面から必須である。ここでpH 6.51といった弱酸性領域で水溶性であることは非常に重要である。また、フラロデンドリマー(4)及び(6)は強固なs結合を介してフラーレンとデンドリマーがつながっているにもかかわらず、C60を簡単に切り離すことができる極めて珍しい性質を有している。フラロデンドリマー(4)のメタノール溶液を45°Cにて12時間反応させたところ、原料であるC60とデンドリマー(3)がほぼ定量的に得られた。これはDiels-Alder反応が平衡反応になっており、メタノールを溶媒として用いた場合、系中に生成するC60がその溶解性の低さから沈澱として系外に出てしまうめこのような定量的な反応になったと考えられる。一方フラロデンドリマー(6)については、(4)に比べかなり安定で同様な条件下で反応を行なってもC60放出の速度は1/20以下に押さえられた。以上の結果は、フラロデンドリマーをフラーレンの分子コンテナとして応用できる可能性を強く示唆している。こうした特性は、フラーレンの徐放性材料や、細胞内にフラロデンドリマーを導入した後に放出したり、C60の保護基として合成反応に利用したり、あるいは、後で述べるフラロデンドリマーの様々な機能のスイッチングに利用したりと、これまでにない応用を可能にするに違いない。 4.3フラロデンドリマーの分子集合体4) フラーレン誘導体の分子集合体については、最近、特に注目されている研究分野である。中村らの位置選択的かつ定量的なフラーレン修飾法の開発とそれに続くフラーレンベシクルやシャトルコック型液晶性分子への展開の美しさには深い感動を覚えずにはいられない12)。筆者らの合成したフラロデンドリマーについても、中村らのフラーレン誘導体同様に水溶性であり、フラーレンを疎水部、デンドリマーを親水部とする両親媒性分子と考えれば、同様な分子集合体形成が期待できる。中村らは水溶液中での分子集合体形成について報告しているが、非水溶液中でのフラーレン誘導体の分子集合体形成についてはほとんど報告例が無い。そこで、筆者らは非水溶液中での分子集合体形成を確認を試みた。フラロデンドリマー(2)のクロロホルム溶液について、動的光散乱(DLS)および原子間力顕微鏡(AFM)の測定を行なった。フラロデンドリマー(2)のクロロホルム溶液(1.5 mM)をマイカ表面に滴下、乾燥したサンプルをAFM (tapping mode)で観測したところ、図4に示すような分子集合体が観測された。分子集合体の直径は100 – 220 nmで高さが3.7 nmというかなり薄いドーム型の形状をしている。これは溶液中に存在する球状の集合体がマイカ表面で平らに広がっていると考えられる。実際に溶液中での集合体をクロロホルム溶液(1.5 mM)中にてDLSを用い観測したところ、45.9±0.2 nmの粒径の揃った集合体を確認することができた。以上の結果は、水溶液中のみならず、様々な溶媒中でのフラーレン集合体形成の可能性を示唆しており、その高次構造の制御や機能化において大変重要な知見を与えているものと考えている。 |

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5. フラロデンドリマーに期待される用途 上記の性質を考慮するとフラロデンドリマーに期待される用途は数えきれない。特にこれまでフラーレンの溶解性の低さや、様々な媒質との親和性の低さ(混ざりにくさ)に起因して応用が困難であった分野、及び、医薬品への応用に関して大きな貢献が見込まれる。フラロデンドリマーに関して期待される用途を大きく2つに分類すると以下のように考えることができる。 5.1複合材料のフラーレン源としての応用 フラーレンは高い電子受容体としての能力をはじめとする様々な機能を持っていることから他の材料との複合化による高機能材料の開発は早くから注目されてきた。しかし、フラーレンは溶解性が非常に低く複合材料を作成する上で混ざりにくいという欠点がある。そのためある種の材料においてはフラーレンをドープすればするほど性能が上がることが分かっていながら、溶解性の低さのためにドープできる量が制限され、性能が頭打ちになるという場合も多く見られた。一方、デンドリマーは、末端官能基を調節することによってあらゆる媒質と親和性を持たせた分子デザインが可能である。従って、フラロデンドリマーを用いれば、これまでに比べ材料の複合化が格段に容易になると考えられる。フラロデンドリマーを複合材料のフラーレン源として用い、あらゆる材料に好きなだけフラーレンを混ぜ込むことができるようになればこれまでに無い機能を持った複合材料が数多く誕生することは間違いない。例えばHirschらはそうしたハイブリッド材料への応用といった観点から、フラロデンドリマー(7a)について太陽電池への応用を検討している13)。 |

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poly(p-phenylenevinylene) (PPV)を利用した太陽電池において、C60をブレンドすると光起電力が向上することが知られている。しかし、C60は溶解性が非常に低いためにほんの僅かしかブレンドできない。そこでデンドリマー(7a)をブレンドしたPPVセルを作成した。残念ながらこの場合には光起電力の向上は見られなかったが、その原因は、ところどころにクレーター状の穴が開いている膜の形状にあることが分かっており、今後、フラロデンドリマーの分子構造及びフィルムの作製法を最適化することにより高性能の太陽電池を作成できる可能性が高い。筆者らの合成したフラロデンドリマーもこうした太陽電池材料として利用できると期待される。 5.2医薬品への応用 フラーレンの応用でもう一つ重要なのはその薬理活性を利用するものである。フラーレンは抗酸化作用・抗菌作用をはじめ様々な活性を持つことが知られており、水溶性フラーレン誘導体を医薬品へと応用する試みは数多い。筆者らの合成したフラロデンドリマーもまた水溶性であることから、同様な生理・薬理活性が期待される。次項でこうした医薬品への応用についてもう少し詳しく述べる。 6. 医薬品への応用 6.1光線力学療法剤への応用 水溶性フラーレン誘導体は様々な光増感生物作用について研究されており、特に癌治療の光線力学療法剤としての応用が期待されている。光線力学療法剤に求められる性質は、弱い光で効率良く活性酸素を発生させる能力と人体に対する毒性の低さであるが、C60における一重項酸素の発生の量子収率(F = 0.96)は、他の代表的な光増感剤であるメチレンブルー(F = 0.52)、ローズベンガル(F = 0.83)、エオシン(F = 0.57)といったものに比べて格段に高い。また、C60は急性毒性は確認されておらず人体に害はないと予測されている。光線力学療法剤への応用が可能かどうかを探るために、これまでに様々な水溶性フラーレン誘導体について光物性の研究が行なわれてきたがフラロデンドリマーの光物性の研究例はほとんどない。そこで、フラロデンドリマー(4)について水中での光物性の測定を行った(図5)。C60の三重項励起状態に由来する吸収が700 nm付近に観測された。減衰曲線の解析から、C60部位の励起三重項の寿命は56 msであることが分かった。系中に酸素が存在する場合には、減衰速度が速くなった。これは、C60の励起三重項から酸素へのエネルギー移動が起こり励起一重項酸素が発生していることを示している(eq. 1)。
この酸素飽和条件下の水中の減衰曲線の結果から、エネルギー移動の速度定数kq(O2)は1.3 x 109 mol-1dm3s-1であることが明らかになった。一重項酸素の生成は重水中での蛍光スペクトル(lmax = 1280 nm)によって確認している。トルエン中の実験結果との比較によって、一重項酸素生成の量子収率は0.45と求められた。これは、無置換のC60よりは低い値であるものの、他のよく知られた色素に比べると、溶液のpHの影響を受けないという圧倒的な利点がある。以上の研究結果はこうしたフラロデンドリマーの光線力学療法剤としての応用が可能であることを明確に示しており、今後の研究が期待される。 |

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6.2抗エイズ薬としての応用 医薬品への応用については癌ばかりではなく、抗エイズ薬としての応用が検討されている。エイズウィルス(HIV)の増殖に不可欠な酵素であるHIVプロテアーゼの活性部位は疎水性で、かつ、フラーレンがちょうど入り込む構造をしている。水溶性フラーレンを用いた実験において、高いHIVプロテアーゼ阻害活性が確認されており、アメリカではすでに治験段階に入っている。フラロデンドリマー(7b)は、これまで知られているフラーレン誘導体のなかで最も高い抗HIV活性が確認されている。フラロデンドリマー骨格中のデンドリマー部位及びC60には毒性がほとんどないことが既に知られており、既存のHIVプロテアーゼ阻害剤に比べ毒性が低く活性も高いことから、次世代の抗エイズ薬として有望視されている。筆者らの合成したフラロデンドリマー(4)及び(6)は、C60の放出が可能であるため、図6に示したような作用機構により、より高い阻害活性が得られると期待している。 |

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6.3フラロデンドリマーを薬剤として利用するメリット 水溶性フラロデンドリマーは薬剤として用いる上で通常の水溶性フラーレン誘導体にはないメリットを持っている。それは、デンドリマー骨格のサイズ効果と分子認識能とを利用する戦略により、細胞へのターゲティングが可能になると考えられることである。 @サイズの効果 デンドリマーはそれ自体が数ナノメートルから十数ナノメートルの大きさを持つ巨大な分子である。これまでの研究から癌組織では正常細胞に比べて毛細血管壁の透過性が高く、正常組織では血管から組織にしみ出さない大きさの分子でも癌組織に入っていくこと。また、癌組織ではリンパ系が未発達のため、癌組織に入った大きな分子は組織内に蓄積しやすいことが分かっている。従って、こうしたサイズの効果を利用した癌組織へのターゲティングを行う上で、フラロデンドリマーは都合が良いといえる。 A多点相互作用による認識能の向上 また、デンドリマーを利用した細胞認識についての研究も非常に盛んである。デンドリマーは表面の官能基を自由に修飾することができる上、官能基密度が高いため、いわゆるクラスター効果により高い分子認識能を発揮することが知られている。こうした多点相互作用による認識機能は特定の細胞や受容体へのターゲティングに有効であると考えられる。 以上の点を考慮すれば、フラロデンドリマーを用いて、全く新しいタイプのドラッグデザインが可能であろう(図7)。今後、こうした研究は重要性を増してくると予想している。 |

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7. まとめ 以上述べてきた通り、筆者らの開発した『フラロデンドリマーの簡便な合成法』は、これまで困難であったフラロデンドリマーの大量合成を可能とした。しかも、一段階反応で水溶性フラロデンドリマーを合成可能である点は特筆に値する。フラロデンドリマーが安価に大量供給されるようになれば、フラーレンの用途開発とそれに続く製品化にとって非常に大きなインパクトを与えることは間違いない。フラロデンドリマーが、これまでフラーレンを利用する上で問題となっていた、溶解性・親和性の低さや細胞のターゲティング等の問題を一気に解決する可能性を考えあわせると、フラーレンを応用する上でのキー化合物の一つになるであろう。筆者らは、今後、合成法のさらなるブラッシュアップと複合材料系への応用、及び、医薬品への応用研究を通して、フラーレン化学の発展に少しでも貢献できるよう努力したいと考えて研究を進めている。 参考文献 1) K.
L. Wooley, C. J. Hawker, J. M. J. Fréchet, F. Wudl, G. Srdanov, S. Shi, C.
Li, M. Kao, J. Am. Chem. Soc., 115, 9836 (1993). 2) フラロデンドリマーについての総説, a) A. Hirsch, O. Vostrowsky, Topics in Current Chem., 217,
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