カリキュラム

環境物質工学科の学習目標

資源の大量消費に支えられてきた近代工業社会は、人類に豊かな生活を提供する一方で、地球の自浄能力をはるかに超える廃棄物や化石エネルギーの枯渇などの問題を産み出してきました。それらの大部分は物質そのものやその変化が関与するものです。環境物質工学科では物質変換やエネルギー変化についての理解を深め、優れた機能を持つ材料の創製や資源・エネルギーの有効利用のための新たな化学プロセスを創出し、住み易い環境造りに貢献できる人材を育てることを目指しています。

環境物質工学科が学生諸氏に期待するのは、化学と科学技術をベースに新たな環境調和型技術を創造するために必要な基礎知識、問題解決のための科学的手法ならびに柔軟な思考能力を修得することです。このための、具体的な学習目標として以下の(A)〜(E)を設定しています。

(A) 自然との共生に関する理解力

国際的な広い視野と社会的な良識を持ち、環境とエネルギーの諸問題を自然と人間社会との共生の課題として地球的観点から考える能力を養う。

具体的目標基準

  • 人間、社会、自然を総合的に扱う主題科目を中心とした教養科目の履修により、自然科学や工学に偏ることなく国際的かつ人文科学的視点からも課題を考える素養を身につける。
  • 環境やエネルギーなどの諸問題について自ら考えることができるようにし、自然と人類との共存という問題を地球的観点から分析できるようにする。
  • 物理、化学、生物や地学などから、複数の分野を履修することにより、自然科学に対する広い視野を身につける。

達成判断基準

  • 物質やエネルギーが関与する環境問題について地球的かつ国際的な視点から説明できる。
  • 環境やエネルギーに関する諸問題に対する環境物質工学の位置づけについて説明できる。
  • 自然と人類との共存という立場から環境物質工学の意義に関して説明できる。

(B) 技術者倫理

化学技術者としての倫理観と責任感を養成する。社会や市民生活、ならびに自然と深く関わる化学技術者として責任を理解し、物質やエネルギーの変換が環境に関わる重要性とその倫理的責任を自覚できる能力を養う。

具体的目標基準

  • 技術者倫理により、社会における技術者としての倫理とは何か、社会的責任がどのようなものであるかを理解できるようにする。
  • 卒業研究を通して、専門知識が技術者倫理とどのように関係するのかを考え、技術が人間社会および自然に及ぼす影響や効果を理解できるようにする。

達成判断基準

  • 著作権および知的財産権の重要性について説明でき、それに基づいて倫理的に行動できる。
  • 化学物質が環境や人体に与える影響を正しく理解し、適正な管理や処理を行うことができる。
  • 科学技術が環境に与える影響を正しく評価し、社会的に責任ある行動をとることができる。

(C) 基礎学力と応用能力

環境物質工学の基礎となる数学と情報処理技術、専門的基礎知識となる化学、材料化学、化学工学を習得し、物質やエネルギーに関わる環境問題を解決するために、それらを使える応用能力を養う。

具体的目標基準

  • 専門科目の理解およびデータ解析に必要な数学の基礎知識を習得する。
  • 情報機器の使い方やプログラムの作成など、情報処理に必要な基礎知識・技術を身につける。
  • 物理化学、有機化学、無機化学、分析化学を中心とした化学の専門知識を身につけ、利用できるようにする。また、高分子化学や固体化学を中心とした材料化学に関する専門知識、ならびに化学工学や反応工学を中心としたプロセス工学の専門知識も身につけ、環境物質工学上の問題解決に利用できるようにする。
  • 修了要件を満たすように専門選択科目を学習し、物質の化学変化やエネルギー変換が関わる環境問題の解決へ応用できる能力を養う。

達成判断基準

  • 環境物質工学の基礎となる数学および情報処理技術を使いこなすことができる。
  • 環境物質工学の専門的基礎知識となる化学、材料化学、および化学工学を使いこなすことができる。
  • 講義や実験から得た知識を統合し、物質やエネルギーに関わる環境問題の解決にそれらを応用することができる。

(D) 自ら課題を設定し、解決する能力

実験を計画・実行し、結果をまとめて論理的に考察できる能力を養うとともに、技術者として自分で課題を設定し、解決するためのデザイン能力を養う。

具体的目標基準

  • 実習・実験科目を通して、計画の立て方や実験の手法を習得し、得られた結果の解析能力を養う。
  • 卒業研究を通して、未知の問題に対し、何が重要な課題なのかを自分で見つけだし、学んだ知識や技能を総合してその課題を解決する能力を養う。また、粘り強く課題を解決する素養や、社会へ出た後も継続的に学習を続けていく能力を養う。

達成判断基準

  • 卒業研究において自ら重要な課題を抽出し、実験計画を設定することにより解決することができる。
  • 継続的な学習により常に自己啓発に努める。

(E) コミュニケーション能力

自分の考えを論理的に相手に伝え、また、相手を理解しすることを目的として、書くことや話すことを訓練する。この手段は、他の人と共同で未知の課題を解決する際に重要となる。

具体的目標基準

  • 物理学実験、環境分析化学実験、環境化学実験、ならびに、卒業研究などにより、図表の作成方法、レポートや論文の書き方、発表の仕方などを習得し、コミュニケーション能力を身につける。
  • 英語、第二外国語により、英語やその他の外国語を読む、聞く、話すための基礎能力を養う。
  • 英語(環境理工)、外国書講読、ならびに、卒業研究により、化学英語の基礎知識を身につける。

達成判断基準

  • 指導教員や他の学生とのディスカッションを適正に行うことができる。
  • 実験内容および結果と考察について他人に的確な文章で伝えることができる。
  • 実験データを効果的な図表にまとめて表現するなど、技術者として必要なプレゼンテーションを行うことができる。
  • 英語でコミュニケーションを行うことができる。