伝わればOKという英単語、専門用語でどうなん?

学部で一部の有機化学の講義(有機化学2)を担当させていただいています。
化学・生命系の有機化学の講義全般では、教科書掲載の太字や青の囲みの化学英語を試験で数題出題しています。
採点の際、毎回思うことがあります。

それは、一部の学生さんは、がんばって英単語をつくってくださっているなということです。
簡単にいうと「専門用語の単語で伝われば良いというのはNG」で自分で創作するな。ということ。
これ、専門用語じゃなくても、同じこと言えると思うんですよね。

例えば、英語でパンツが欲しいとお店の人に言っても、でてくるのはズボンです。日本語でいうパンツが欲しいなら(下着:underwear)って言わないと伝わらない。
英語でパンくださいといっても、食パンは買えません。bread といわないと伝わらない。
bikeに乗るのが好きです。英語bikeは自転車で、日本語のバイクはmotorbike。。。
カタカナで書かれるような英語っぽい日本語の単語ですら、通じません。
だから、英単語は正しく使わないとね。ということを理解できるでしょう。

なのに、どうして試験になると、伝われば良いでしょ。なんとなく意味が通じれば良いでしょ。という発想がでてくるんでしょうか?おそらく、試験となると、何か書かなければ損。とにかく書いて点数もらえればラッキーという考えの方が一定数でてくるのだと思います。白紙はどうやっても点数増えることはありませんから、その考えも理解できます。また、高校までの試験では何か書いてあれば部分点がもらえたかもしれません。

理系の論文では、再現性がとれ、誤解を与えることなく、読み手に伝わる文章が重要視されます。
会話の場面では、わからない部分を聞いて誤解を埋めながら正解にたどりつくことができるかもしれません。しかし、誤解を与えないということは、紙や電子媒体の文字においては重要です。誤解されて伝わってしまうと、何をどうして良いものか理解できなくなってしまいます。

野球で例えてみましょう。
「野球」は英語で「baseball」ですね。
これ、日本語で野球なので、野でやる球みたいな感じで、field ball といったら伝わるでしょうか?
ball fieldのこと?と語順を逆にして、聞き手、読み手が想像してしまったら、野球場のこといっているのか?と誤解されてしまいます。小説や俳句、短歌などでは、読み手が想像するということが面白いわけですが、学術論文において、誤解を生むという表現はNGです。何度も書きますが、「理系の論文では、再現性がとれ、誤解を与えることなく、読み手に伝わる文章が重要」視されます。ましてや読み手が行間を読んだり、想像したり連想したりするような表現は好ましくありません。

専門用語は、荒っぽい表現をすると、「固有名詞」みたいなものです。その表現以外ない。

大喜利で山田さん相手に、「田中さん、座布団一枚持って行って」と発言しても、おいおい司会者、何いっているんだ?ってことになりますよね。
野球で監督が、ピッチャーO谷選手に交代。と審判に告げ、違う選手が投げたら、おいおいそれはあかんやろってことになりますよね。
固有名詞みたいなものなんです。
例えば、「りんご病」、英語では「slapped cheek disease」、「Fifth diseas」もしくは「Erythema infectiosum」というそうです。これを、りんごの病というような感じで、 私のApple diseaseを治療してくださいとお医者さんにお願いしても、お医者さんは何のことか意味不明で困ってしまうでしょう。農薬買って、おまえの農園のりんごに噴霧してよといわれかねません。
化学に寄せて話をすると、高分子は、英語でpolymer、もしくはmacromolecule。
これ以外は一般的にありえない。例えば、無理やりhigh molecular weight moleculeといっても、何言っているんだ???この人はという話になります。
蟻酸は、formic acidです。これも、蟻 (ant)の酸 (acid) なので、無理やり英単語を創作してantacidとすると、胃酸を中和する薬のことになってしまいます。

せっかく学ぶんですから、正しい科学(化学)用語を覚えましょう!!!


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