卒論・修論を書き出す前のチェックシート

卒論修論で、よくある間違いを書き出しておきました。先輩と同じ間違いをしないように、あらかじめ、確認してから書き始めよう。

卒論・修論を書き出す前のチェックシート
(印刷し、読んだら文頭の • をまるで囲もう)

  • 論文では研究の時系列じゃなく、読み手が分かるように再構成してね。それは捏造じゃないかと思ってる人がいたりするが、そんな心配は無用。論文は日記じゃない。例えば予想外の驚くべき結果が出たとしても、神のごとき洞察力で最初から予想していたと書いてよろしい!
  • イソプロパノールは大間違い。イソプロピルアルコールまたは2-プロパノールとせよ。
  • マイナスは-ではなく–です。
  • https://www.chem-station.com/blog/2018/01/excel.html を読むこと!
  • 段落のまとまりの意味をよく考えて欲しい。意味がまとまっているのに、適当に段落を分けてはいけない。
  • 【日本語講座】「見出す」、「見出だす」、「見いだす」は正しいが、「見い出す」は間違い。
  • http://www.yamanouchi-yri.com/yrihp/techwrt-2-4s/t-2-4s03fd.htm を読むこと!
  • ChemDraw の使い方【作図編④: 反応機構 (前編)】https://www.chem-station.com/blog/2018/01/chemdraw4.html を読むこと!
  • ChemDrawの使い方【作図編⑤ : 反応機構 (後編)】https://www.chem-station.com/blog/2018/01/chemdraw5.html を読む。
  • 「可分散化できる」はNG。「可分散化する」もしくは「分散できる」
  • hyphen「-」とen dash「–」は違う記号です。使い分けるべし。
  • 一つの文章に主語が一つが鉄則。主語は、〜では$$、〜では&&であった。とすると主語が混乱している、「〜では」を「〜において」と書くと混乱しない。
  • 「AFM測定」はNG。このMは顕微鏡だから、「AFM観察」が正しい。TEMとかSEMも同じだ。
  • 「調製」と「調整」、「作製」と「作成」。こればかり直していると、「いい加減に製!」と言いたくなるよね。
  • 「〜からの光誘起電子移動が起こり」では、どこへの電子移動か分からない。必ず、「〜から〜への光誘起電子移動」と書いて、議論でどこにスポットライトが当たっているのかを明確にするのが科学的な表現。
  • コンマ「,」の後は、半角空ける。コロンでも、セミコロンでも、ピリオドでも、何も付いていなくても、半角空ける。半角空けないのは、ハイフンで単語をつないだ時「(例)550-nm light」(この550-nmは、合体してひとつの形容詞になっている)と、角度「(例)60°」くらいかな?温度ならば、半角空けるのがルール「(例)60 °C」ちなみに、500 – 600 nm というように範囲を示す時は、ハイフンで1つの単語にするのではなく、endashで示すので、半角空いてます。頼むよ〜
  • 報告書や論文。もちろん卒論・修論は、「〜です。〜ます。」調ではなく、「〜した。」調で書く。
  • 発表のセリフとして、「アントラセン励起」、とか、「CNT励起」、「MoS2励起」などを言うのはOKなのですが、論文で書くとなると問題です。光励起なのか、熱励起なのか、はたまた電気化学的に励起したのか分かりません。正確には、例えば、「波長680 nmの単色光を照射しCNTを励起したところ、CNTからフラーレンへの光誘起電子移動が起こったことを、過渡吸収スペクトルにより…」のような形で書きます。
  • 論文は、「誤解される余地の無いように書く」ことが一番大切で、できるだけ簡潔な文章で、かつ、誤解しようのない文章が良しとされるのです。面倒でも、細かく、正確に書きましょう。
  • 文章中の「Figure 1」にはピリオドは不要です。Figure Captionには必要。「Figure 1. 図の説明.」
  • 「µm」について、日本語フォントでマイクロ、と打ち込んで“μ”を出してはいけない。times new romanの特殊文字で“µ”を入力してください。そうすれば、何をどういじっても、変なことにならない。
  • ラムダは仕方ない、times new romanで「l (小文字のエル)」を打って、フォントをsymbolに変える。でもこれだと、コピペしたりした時、フォントが変わってもとに戻る時があるから、注意してください。
  • 液体の試薬について、密度と容積をつかってモル数を合わせた場合においても、実験項では、試薬の重量を記載してください。例えば、トリエチルアミンなら、『…トリエチルアミン($$ mL, $$ mg, $$ mmol)を加えたのち、3時間攪拌した。』のように書いてあるのが、実験項の掟。
  • 実験項で重さや容量を記載する際、有効数字に注意して書かなくてはいけない。ある試薬は、5 g測ったら、カーボンナノチューブは、1.0 mgと記載しないといかん。実際、カーボンナノチューブの重さを測るのは難しいけれど、もし、天秤が、1.08 mgを指していれば、神様を信じて、1.1 mgと記載してください。
  • 実験項のはじめには、どんな測定装置を使ったかとか、試薬はどこで買ったかとか、溶媒は、買ったものをそのまま使いましたとか、もろもろ前提条件を書く。自分の行った実験だけでなく、これらを「General」とか「Materials and methods」として書くことを忘れないで。
  • 【リットルの”エル”は大文字に】 数字の1と紛らわしいため、小文字は非推奨。
  • パラグラフ(段落)のアタマは、一文字下げる(和文の場合)。英文では、半角スペース5つ、もしくは3つかな。
  • 文末に(Figure #)を入れる場合。「〜が観察された(Figure #)。」とする。句読点がカッコの直後。
  • 赤阪先生からのリクエストで、化学者は、カーボンナノチューブの「カイラリティー(chirality)」と云うのはやめよう、「ヘリシティー(helicity)」と云おう!とリクエストを頂いています。カーボンナノチューブのヘリシティーと物性の関係を最初に研究したのが、物理屋さんだった関係で、カイラリティーという間違った呼び方が定着してしまいましたが、言葉の使い方としては間違っていて、ヘリシティーが正しいので、化学者がヘリシティーということで、まずは、化学のソサエティーで、そしていずれは、物理のソサエティーにも、正しい言葉の使い方を広げたいとのことです。そこで、みなさん、すみませんが、卒論・修論では、極力、ヘリシティーという言い方で記載してください。
  • 助触媒上で水素が発生するところの反応について、「水の還元反応により水素が発生する。」と云うのは、やや、危うさを感じる。電気化学的に決められた電位は、H+/H2であってH2O/H2という化学反応は無い。卒論のセリフで言うのは、まあ、許すかな?と思いますが、文章として書く時は、やはり、「水中のプロトンが還元されて水素が発生する」が正確な表現かと思う。
  • 実験項で、使用した試薬を記載する際、重さとモル数の両方を記載してください。BNAH (## mg, ## mmol)と書けば、後から実験する人は、重さを見て実験できるし、反応条件を検討する人は、当量関係を確認できる。誰にでも優しい実験項を書く。なお、液体試薬の時は、そういう優しさを発揮して、NEt3 (## mL, ## mg, ## mmol)と書く。ちなみに、液体試薬をマイクロシリンジではかって使う場合、空のマイクロシリンジで、予想される容量をはかり、それを、天秤で重さを確認した上で、注入し、注入後の重さを再び確認するのが良いやり方。
  • 論文に登場する化合物名について、最初に登場した時は、正式名(IUPAC名)を記載し、化合物番号には括弧がつく。(例:「化合物名 (1)」)その後は、略称でも構わない。括弧も不要。(例:「略称 1」)
  • FigureにはFigure captionをつけよう。卒論修論は日本語で書いても、Figure captionくらいは英語で書くのがおすすめです。
  • 可分散化と可溶化は意味が違って、ちゃんと使い分けないといけない。「溶ける」というのは、熱力学的に安定な状態として溶けている。溶けるか溶けないかは、ΔGの問題。分散は、熱力学的に不安定な状態だけれども、相分離するには、ずいぶんと時間がかかる状態。CNTもMoS2も、みんな、分散しているのであって、溶けているわけでは無い。
  • 論文を書く時は、和文においても、英語を意識して書く。(これは、おそらく、サイエンスが、日本に輸入された学問だからで、養老孟司が指摘しているとおり、日本独自の記載方法があって良いはずではあるのですが、初学者のみなさんは、まず、流儀を身につけることが肝要と考えます。)例えば、「A, B, and C」と書くことを考えて、「A、B、および、C」と書くのが一般的。それから、「〜も観察された。」のように、「主語+も」で文章を書くのは、英語になおしてみるとおかしくなる場合が多い。極力「〜は、」で主語を書こう。
  • ✕ 通常細胞 ◯ 正常細胞
  • 範囲を示す時、和文ではよく「300〜400 nm」などと書くが、これはNG。必ず、en dashを使う。「300 − 400 nm」
  • 「〜では」とか「〜の場合は」を使う時、かなり注意が必要。できれば使わない方向で文章を考えるのが無難。例文:化合物1を加熱する前の室温では青色蛍光であった。コメント:文章には、主語と述語が必要。述語が、青色蛍光であった、のなら、主語は???こういう文章は、誤解を生みやすいので、論文ではNG。まず主語と述語の短い文章を作り、それに修飾を加えれば間違えない。いろんな正解があり得るが、たとえば、薄膜の蛍光色は青色であった。→化合物1の薄膜の蛍光色は青色であった。→加熱前、室温における、化合物1の薄膜の蛍光色は青色であった。と変化させていく。
  • 合成の実験項において、得られた化合物の収量と収率を記載するのはもちろんなのですが、必ず、モル数も記載してください。例:化合物 5 ( 123 mg, 12.3 mmol, 収率88%)が白色結晶として得られた。
  • 試薬を使って合成反応をする時に、「原料Aに試薬Bを作用させ、目的物Cを得た」と書く人が多いのですが、これはNG。作用・反作用の法則で分かるように、作用というのは、力や影響をおよぼすことで、作用するものは、本質的に変化しない。試薬Bは原料Aと反応した後、何かしら別のものに変化してしまうのであれば、それは、作用させるのではなくて、反応させている。したがって、「原料Aと試薬Bとを混合し、室温にて3時間撹拌したところ、〜〜反応が進行し、目的物Cが得られた」とかなんとか、別の書き方にしてください。もちろん、以下のような使い方はあり得る。「この反応において、試薬Bは触媒として作用している。」触媒は、反応前後で変わらない。こういう時は、反応するというより、触媒として作用するというのが、より正確だと言える。
  • 白色結晶というものは存在しません。無色透明な結晶です。英語でもwhite crystalsとはいわず、colorless crystalsになりますので。
  • 化合物番号は太字で書く. (数値等でないことを明確にするため)名前で明らかに構造がわかる化合物の化合物番号は(数字)、明確にわからないものは()をつけない。例)デンドリマー1 どういうデンドリマーかは、わからないので(1)としない。2,4-dimethylhexane (1) 完全に構造が決定されるので、2,4-dimethylhexane 1としない。
  • 結合長、結合角を議論するときは、標準偏差 () の中の数字まで記載することが大切です。例)C1–C2 1.513(4) Åこの値は、513 Åなのではなく、1.513±0.004×1.96すなわち、1.505 – 1.521 Åの範囲に正解があるという意味です。逆に標準偏差が大きいデーターは議論が微妙で、時によっては結合交替のないものを、結合交替があると議論してしまったりすることがあります。
  • 反応温度、通常(オートクレーブとかは別)、トルエンで120度、115度で加熱しようが、反応温度はトルエンの沸点以上にはならないので、反応温度は115度ではない。この場合、論文では、加熱還流 (reflux)と書けばよい
  • 数字と単位の間は1スペース開ける。ただし、% や ˚ の前はあけない。
  • 卒論・修論の中の合成スキームについて、ChemDrawの設定はすべて同じにし、貼り付けたときの拡大縮小サイズを揃えないといけない。同じページでベンゼン環の大きさが違うのは論外だが、違うページでも、統一感のある図を配置することで、あら不思議、ものすごくカッコよくなる。
  • スキームやFigureの書き方は、JACSなどをよく見て、まねること。化合物番号は、ArialのBoldになっているはず。その他、いろいろとルールがあります。我流はNG。
  • 収率を計算したら、100%を超えてしまうこと。あると思います。が、合成スキームで、収率124%と書くのはいただけない。こういうときは、例えば、 と書く。quantitative yieldの略。
  • 硫酸と濃硫酸は違う試薬と考えたほうが良い。濃硫酸を使用したときは、濃硫酸と必ず書くこと!
  • 実験項の役割は、あなたの行った実験を、あなたの知らない他人が、再現できるようにすることです。科学で最も重視される再現性を保証するために、隅々まで気を配って書くべきです。例えば、反応器はどのくらいの大きさか?とか、反応の雰囲気(Ar雰囲気かN2雰囲気か、塩カル管をつけただけなのか)とか、カラムの展開溶媒とか、初めて同じ実験をする人に、丁寧に実験の仕方を教えてあげるつもりで、細かく書きましょう。合成の論文ですと、カラムの展開溶媒とTLCの展開溶媒が異なる場合、そこまでちゃんと書いてあるものがあったりします。そのくらいの気概を持って!
  • とは言いながら、論文に使う決まり文句を使う必要があります。「塩基性から中性に変える」というのは、「中和する」と書くべきですし、「窒素置換して反応した」は、「窒素雰囲気下で反応した」と云うべきです。
  • 溶媒をエバポレーターで蒸発留去する場合、「濃縮した」と書いても、どうやって、どこまで、濃縮したか分かりません。これ、どう書くのが日本語論文でもっとも良い書き方なのか分かりません(昔は、蒸発留去とか、乾燥留去とか書いていたように記憶しています)が、後輩に伝わりやすくするために、「エバポレーターを用いて溶媒を蒸発留去した」と言うような書き方にしてくださると良いかと思います。
  • Wordもエクセルも、Chemdrawも、基本、デフォルトの設定がいけていないと考えるべし。半角英数字には、日本語と同じフォントを使わずに、英数字専用のフォントを使います。Wordで文章を作成するときは、一般的に明朝体のフォントのときは、英字は、Times or Times New Romanを使う。ゴシックフォントのときは、英字は、Arial or Helveticaを使う。デフォルトのCenturyは使いません。学術雑誌の投稿規程で原稿に使うフォントとしても、Centuryが推奨されているのを見かけませんし、国内学会の要旨でも、半角英数字は日本語のフォントを使うとしていません。これらの理由は共通していて、イタリック体の文字データが入っていないからです。Word®でCtrlを押しながらIのキーを押すとイタリック体にできます。Times New Romanのaをイタリック体にすると単に斜めになっているわけではないのがわかります。一方、Centuryにはイタリック体のデータがないのでWord®のほうで無理やり斜めにして表示します(単純な斜体はObliqueともよばれます)。なので見た目が少し不自然です。
  • 構造式はきれいに書こうね。汚いとそれだけで印象が悪くなる。雑な式は内容まで雑な印象を与える。
プッシュ通知を