ポスター発表のポスターをつくる前にみておくこと(その1)

秋の学会シーズンを迎え、色々とポスターで指摘したことなどを一度まとめておこうと思います。色々な意見があるとは思いますが、個人の意見としてまとめる予定です。一度には書けませんので、少しずつ、時間のあるときに更新の予定です。

ポスター発表…
私はセンスがないので苦手…というあなたへ。

先生や先輩にみてもらって、ポスターが美しくないなど、色々言われることはあると思います。
まず、大前提として、ポスター発表は学術発表ですので、
○面白い研究であることを示す
×美的センスが高いことを示す
であって、
「美しい美的センスのある芸術的なポスター」 = 「良い研究」「面白い研究」ではありません。

しかし、「お〜!!美的センスがないので内容で勝負だ!」といきごんでも、研究内容を理解してもらうには、
「誰もに伝わるルール」でシンプルにつくる必要があります。

1 誰もに伝わるルールって何だろう?
信号機の青は青?緑?とわからない色ですが、統一され、道路で使用されています。
現在使用されている青信号は真の青色ではないと別の色にしてしまったり、目立たないなあと点滅させてみたり、漢字で青という字にかえて光らせようとかしたら、どうなるでしょうか?「青信号で進んでも良いなのかも?」「いや青信号ではないので進んではいけない」「子どもなので青の漢字が読めない」「近眼で見えない」と、人によって受け取り方が違ってしまうと大混乱になります。それと同じで、科学では誤解を与えずに情報をつたえなければなりません。それと同じで勝手に判断し、アレンジして作ってしまうと誤解を与え、わかりにくくなってしまうことがあります。

2 どういうときに誤解を与えやすいポスターになってしまうのだろう?
図の使い回しではなく、発表内容にあわせて新しく図を作成するということは重要です。しかし、掲載できるスペースは限られています。スペースの関係で何かを省略したり、略号を使うというときに、誤解を与えやすい図になってしまうことが多いように感じます。特に反応スキームや実験結果のスペクトルをのせるときは注意が必要です。

実際にあった例を紹介します。

分子構造の詳細は描きませんが、丸の中には化合物の化学構造式が描かれていると思ってください。この反応スキーム、本当は2段階の反応を示したものです。実際には、化合物1に反応試薬Aを加え、ここには書かれていない化合物2を合成した後に、反応試薬Bを加え化合物3を合成しています。スペースが限られていなければ、2段階の反応をしっかりと描き、化合物1 → 化合物2 → 化合物3 という反応経路をきちんと描けたのでしょう。化合物1も化合物2も化合物3も分子サイズが大きいため、スペースの関係ですべて描ききれず、化学反応式の矢印をたてに並べまとめて簡略化した。化合物番号2はでてこないので、化合物1から化合物2を経由して化合物3が合成されていることがわかるということだそうですが、それはかなり行間を読んで、想像しないと伝わりません。試行錯誤の上、自分で工夫したことは素晴らしいことなのです。しかし、化合物1に反応試薬Aを加えると化合物3ができる。化合物1に反応試薬Bを加えても化合物3ができる。という捉え方もできますし(おいおい化合物2はどこ行った?)見る人によって理解の仕方が異なる図になってしまっています。

3 どうすればよかったのでしょうか?
こういうときは、自分のやった化学反応式をみるとともに、「論文で使用されている図をかたっぱしから見る」と良いでしょう。論文は第3者のレフリーによってしっかり査読されていますので、誤解を与える図だったらレフリーから、おいおいこの図は誤解を与えるし、あかんやろ〜と言われ、修正されることなしに、誤解を与える図で掲載されていないはずです。
例えば、巨大な分子の中の特定の官能基のみが化学反応によって変化しているだけであれば、下の図のように、変化している官能基をRと表記し、化合物2を化合物2a, R = CO2Me、 化合物3を化合物2b, R = CO2Na と表記するような表現もできるでしょう。少なくとも、多段階の反応で合成していることや、それぞれの反応試薬、反応条件、分子の構造はきちんと誤解なく伝わる表記になっていて、上の図で問題であった誤解を与える図からは改善されていると思います。これは一例ですが、自分のしめしたい結果と論文の図を沢山見比べると、色々な解決方法や表現が見つかると思います。

研究の考察や仮説という部分は様々あるでしょう。しかし、実験結果を示すときには、文献でどう描かれているのかなどを参考にし、誤解なく、明確にしめすことが重要なのかもしれません。

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